オレンジ色の大きな実に、目と口をくりぬいたランタン。10月の終わりが近づくと、街のショーウィンドウやお菓子のパッケージに、かぼちゃの顔があふれ出します。2026年のハロウィンは10月31日(土)。週末と重なることもあり、パーティーや仮装を楽しむ人、家でかぼちゃ料理を作る人も多いのではないでしょうか。
けれど、かぼちゃは「ハロウィンの飾り」だけの存在ではありません。ほくほくの煮物、なめらかなポタージュ、香ばしい天ぷら、そして冬至に食べるかぼちゃ。日本の食卓でも、秋から冬にかけて欠かせない野菜です。じつは、かぼちゃには「収穫してすぐより、しばらく置いたほうが甘くなる」という、ちょっと不思議な性質があります。
この記事では、ハロウィンと冬至をつなぐ秋冬の野菜・かぼちゃを、自然・科学・歴史・文化・哲学というGASTRONOMIXの5つの視点から読み解きます。ジャック・オー・ランタンがもともとはカブだったという話から、追熟で甘くなる科学、日本・西洋・ペポかぼちゃの違い、甘いかぼちゃの選び方と保存法、甘さを引き出す調理のコツまで。知れば知るほど、今年のかぼちゃはもっとおいしくなるはずです。
この記事でわかること
・2026年のハロウィン・冬至の日付と、かぼちゃの価格や産地の最新事情
・ジャック・オー・ランタンの歴史と、もともとカブだった理由
・かぼちゃが収穫後に甘くなる「追熟」と「キュアリング」の科学
・日本かぼちゃ・西洋かぼちゃ・ペポかぼちゃの違い
・甘いかぼちゃの選び方・保存法と、甘さを引き出す調理のコツ
2026年のかぼちゃ事情|ハロウィンは10月31日、冬至は12月22日
まずは、2026年秋冬のかぼちゃをめぐる状況を整理しておきましょう。キーワードは「ハロウィンと冬至」「一年中ある理由」「価格の目安」の3つです。

かぼちゃが主役になる2つの日
かぼちゃが一年でいちばん注目を集めるのは、10月31日のハロウィンと、12月の冬至です。2026年のハロウィンは土曜日、冬至は12月22日(火)にあたります。ハロウィンでは飾りやお菓子の主役として、冬至では「冬至かぼちゃ」として、かぼちゃは秋から冬にかけて二度、季節の行事の主役を務めるのです。
国産と輸入のリレーで、一年中店頭に並ぶ
かぼちゃは、ほぼ一年中スーパーで見かける野菜です。その理由は、産地のリレーと輸入にあります。国内では、春から初夏にかけて鹿児島や沖縄などの暖かい地域、夏には長野などの本州、夏の終わりから秋にかけては国内最大の産地・北海道のかぼちゃが出回ります。主な産地は北海道、鹿児島、長野などで、なかでも北海道は全国の出荷量の大きな割合を占めています。
そして、国産が少なくなる冬から春にかけては、季節が日本と逆になる南半球のニュージーランドや、メキシコなどから輸入されたかぼちゃが店頭を支えます。冬至のころに並ぶかぼちゃは、追熟させて貯蔵した北海道産と、輸入ものが中心になることが多いでしょう。
価格の目安は1キロあたり500〜700円前後
農畜産業振興機構(alic)が紹介している総務省の小売物価統計によると、東京都区部のかぼちゃの小売価格は、2025年の平均で1キロあたり682円でした。近年はおおむね1キロあたり500〜700円前後で推移しています。天候や為替、輸入の状況によって値動きはありますが、丸ごと1個よりも、4分の1カットなど食べきれる量で買う人も増えています。
【歴史】ジャック・オー・ランタンは、もともと「カブ」だった
ハロウィンといえばかぼちゃ。けれど、その組み合わせは最初から決まっていたわけではありません。

始まりは古代ケルトの「サウィン祭」
ハロウィンのルーツは、2000年以上前に現在のアイルランドやイギリスなどに暮らしていた古代ケルトの人々の祭り「サウィン(Samhain)」にあるとされます。ケルトの暦では11月1日が新年にあたり、その前夜の10月31日は、夏が終わり、暗く寒い冬が始まる境目でした。この夜には死者の魂がこの世に戻ってくると考えられ、人々は火を焚き、仮面をつけて身を守ったと伝えられています。
のちにキリスト教が広まると、11月1日は「万聖節(All Hallows’ Day)」となり、その前夜は「All Hallows’ Eve」と呼ばれるようになりました。これが縮まって「Halloween(ハロウィン)」になったといわれています。
アイルランドのランタンはカブ製
アイルランドには、「ジャック」という男の伝説があります。悪魔をだまして地獄に落ちないと約束させたものの、生前の行いが悪すぎて天国にも入れず、行き場をなくしたジャックは、悪魔からもらった火種をくりぬいたカブに入れ、明かりにして暗い夜をさまよい続けている――。この「ランタンを持ったジャック」が、ジャック・オー・ランタンの名前の由来とされています。
実際にアイルランドやスコットランドでは、カブやルタバガ(スウェーデンカブ)をくりぬいて顔を彫り、魔よけの明かりにしていました。いまもアイルランドの博物館には、ぎょっとするほど怖い顔をしたカブのランタンが残されています。
アメリカで「かぼちゃ」に替わった
19世紀、ジャガイモ飢饉などをきっかけに、多くのアイルランド人がアメリカへ移住しました。移民たちは故郷の風習を持ち込みましたが、新大陸ではカブよりも、大きくて中身をくりぬきやすいかぼちゃが手に入りやすかったのです。こうして、かぼちゃのジャック・オー・ランタンが生まれ、やがてアメリカのハロウィンの象徴になりました。
日本のハロウィンは1990年代後半から
日本では、1990年代後半にテーマパークのイベントや川崎市のパレードなどでハロウィンが広く知られるようになり、2000年代以降、仮装やお菓子、限定スイーツを楽しむ秋のイベントとして定着していきました。日本のハロウィンは宗教的な意味合いよりも、季節を楽しむお祭りとしての性格が強いのが特徴です。
【自然】かぼちゃは大きく3種類|日本・西洋・ペポの違い
ひと口にかぼちゃといっても、じつはさまざまな種類があります。ここでは、かぼちゃという植物の素顔を見ていきましょう。

原産地はアメリカ大陸
かぼちゃは、ウリ科カボチャ属の植物で、原産地は南北アメリカ大陸です。メキシコの洞窟からは、紀元前7000〜5500年ごろのものとされる種子が見つかっており、トウモロコシや豆とともに、アメリカ大陸で最も古くから栽培されてきた作物のひとつと考えられています。ヨーロッパに伝わったのは、コロンブスがアメリカ大陸に到達した後のことです。
日本かぼちゃ――ねっとり、しっとり
日本かぼちゃは、中南米の暖かい地域が原産の種類です。表面に深い溝やこぶがあり、果肉は水分が多く、ねっとり、しっとりとした食感が特徴です。甘みは控えめですが、煮崩れしにくく、だしの味をよく含むため、和食の煮物に向いています。京都の「鹿ケ谷かぼちゃ」のように、ひょうたん形の伝統野菜もこの仲間です。
西洋かぼちゃ――ほくほく、甘い
いま日本のスーパーで売られているかぼちゃの多くは、西洋かぼちゃです。南米の冷涼な高地が原産とされ、表面はなめらかで、果肉はほくほくとして甘みが強いのが特徴です。栗のようなほくほく感から「栗かぼちゃ」と呼ばれる品種群が主流で、「えびす」や「みやこ」、「くりゆたか」などの品種が知られています。
ペポかぼちゃ――形も色も多彩
ペポかぼちゃは、北アメリカ南部やメキシコが原産とされる種類で、形や色がとても多彩です。じつはズッキーニや、ゆでると果肉が糸状にほぐれるそうめんかぼちゃ(金糸瓜)もペポかぼちゃの仲間です。アメリカでハロウィンのランタンに使われるオレンジ色のかぼちゃの多くもこの仲間で、果肉は水っぽく、食用というより飾り用として育てられることが多いといわれます。
雄花と雌花、ミツバチが実を結ぶ
かぼちゃのつるには、雄花と雌花が別々に咲きます。雌花の付け根には、すでに小さなかぼちゃのふくらみがあり、ミツバチなどの虫が雄花の花粉を運ぶことで実が育ち始めます。家庭菜園では、朝のうちに人の手で受粉させることもあります。大きな黄色い花は、イタリア料理では詰め物をしてフライにするなど、食材としても楽しまれています。
【科学】かぼちゃはなぜ甘くなる?「追熟」と「キュアリング」
畑からとってきたばかりのかぼちゃが、いちばんおいしい――。そう思いがちですが、西洋かぼちゃの場合は少し事情が違います。

収穫直後は「でんぷん」が多く、甘みは控えめ
西洋かぼちゃは、育つあいだに光合成でつくった糖を、でんぷんとして果肉にたくわえます。収穫したばかりのかぼちゃは、このでんぷんが多い状態で、加熱するとほくほくしますが、甘みはまだ控えめです。とれたてを食べて「思ったより甘くない」と感じるのは、このためです。
置いておくと、でんぷんが糖に変わる
収穫後のかぼちゃは、生きて呼吸を続けています。貯蔵しているあいだに、果肉の中の酵素のはたらきででんぷんが少しずつ分解され、ショ糖などの糖に変わっていきます。これが「追熟」です。品種や保存の条件にもよりますが、収穫から数週間から1〜2か月ほどたつと、でんぷんと糖のバランスがよくなり、ほくほく感と甘みを兼ね備えた食べごろを迎えるとされています。
ただし、置けば置くほどよいわけではありません。長く置きすぎると、呼吸で糖が使われたり、水分が抜けて果肉がぱさついたりして、風味が落ちていきます。「甘さ」と「ほくほく感」のちょうどよいバランスの時期を楽しむのが、かぼちゃのおいしさの秘訣です。
切り口を乾かす「キュアリング」
産地では、収穫したかぼちゃを風通しのよい場所にしばらく置き、ヘタの切り口や表面の小さな傷を乾かす「キュアリング」が行われることがあります。こうすることで、傷口からの腐敗を防ぎ、長く貯蔵できるようになります。北海道産のかぼちゃが秋から冬至のころまで出回るのは、この貯蔵の技術があるからです。
オレンジ色の正体は「β-カロテン」
かぼちゃの鮮やかなオレンジ色は、β-カロテンなどのカロテノイドという色素によるものです。カロテノイドはにんじんやトマトにも含まれる色素で、果肉の色が濃いかぼちゃほど、β-カロテンを多く含む傾向があります。
甘さを感じる「ほくほく」の秘密
ほくほくした食感は、加熱によってでんぷんの粒が水を吸ってふくらみ、細胞がばらばらにほぐれることで生まれます。でんぷんの多い西洋かぼちゃはほくほくに、水分が多くでんぷんの少ない日本かぼちゃはねっとりに仕上がるのです。同じかぼちゃでも、追熟の進み具合によって、食感と甘さのバランスが変わります。
かぼちゃの栄養と「冬至かぼちゃ」
かぼちゃは、昔から「冬至に食べると風邪をひかない」といわれてきた野菜です。その言い伝えには、栄養の面からも理由がありました。

β-カロテンは日本かぼちゃの約5倍
文部科学省の「日本食品標準成分表」によると、西洋かぼちゃ(生)のβ-カロテン当量は100gあたり約4,000μgで、日本かぼちゃの約5倍にあたります。β-カロテンは、体内で必要に応じてビタミンAに変わり、皮膚や粘膜の健康を保つのに役立つ栄養素です。
ビタミンE・ビタミンC・食物繊維も
かぼちゃには、「若返りのビタミン」とも呼ばれるビタミンEや、ビタミンC、食物繊維も含まれています。ビタミンCは加熱に弱い栄養素ですが、かぼちゃのでんぷんに守られて、比較的失われにくいともいわれます。一方で、西洋かぼちゃはでんぷんや糖が多いため、エネルギーは100gあたり約80kcalと、野菜としてはやや高めです。
なぜ冬至にかぼちゃを食べるのか
一年でもっとも昼が短い冬至は、昔から「この日を境に太陽の力がよみがえる」と考えられてきた節目の日です。冷蔵庫も輸送手段もなかった時代、冬に食べられる緑黄色野菜はかぎられていました。夏から秋に収穫して長く貯蔵できるかぼちゃは、冬を越すための貴重な栄養源だったのです。
また、冬至には「ん」のつく食べ物を食べると運がつく、という言い伝えもあります。かぼちゃの別名「南京(なんきん)」には「ん」が2つも入っていて、縁起のよい食べ物とされました。2026年の冬至は12月22日(火)。ゆず湯とあわせて、かぼちゃの煮物やいとこ煮を楽しんでみてはいかがでしょうか。
甘いかぼちゃの選び方
同じ売り場に並んでいても、かぼちゃの甘さはひとつひとつ違います。おいしいかぼちゃを見分けるポイントを押さえておきましょう。

ヘタが乾いて「コルク状」になっている
丸ごとのかぼちゃを選ぶときに、まず見たいのがヘタです。ヘタが乾いて茶色っぽくなり、コルクのようにかたくなっているものは、十分に熟して追熟も進んでいるサインです。反対に、ヘタがみずみずしく緑色のものは、まだ若い可能性があります。
ずっしりと重いもの
同じくらいの大きさなら、手に持ったときにずっしりと重いものを選びましょう。果肉がよく詰まっていて、ほくほくとした食感が期待できます。
皮がかたく、色が濃いもの
皮は、爪を立ててもへこまないくらいかたく、色が濃いものがよいとされます。表面のつやは、熟すと控えめになることもあるため、つやがないからといって悪いわけではありません。地面に接していた部分が黄色くなっているのは、日の当たらなかった跡で、品質には問題ありません。
カットかぼちゃは「種」と「果肉の色」を見る
カットされたかぼちゃを買うなら、種がふっくらと詰まっていて、果肉の色が濃いオレンジ色のものを選びましょう。果肉の色が濃いほど、甘みやβ-カロテンが多い傾向があります。ワタが乾いていたり、切り口がしなびていたりするものは、切ってから時間がたっている可能性があります。
かぼちゃの保存方法|丸ごと・カット・冷凍
かぼちゃは保存のしかたによって、日持ちが大きく変わります。状態に合わせて保存しましょう。

丸ごとなら「涼しい常温」で1〜2か月
丸ごとのかぼちゃは、皮がかたく、もともと長く貯蔵できる野菜です。新聞紙などに包んで、風通しのよい涼しい場所に置けば、1〜2か月ほど保存できるといわれます。冷蔵庫に入れる必要はなく、むしろ低すぎる温度は傷みの原因になることもあります。夏場や暖房の効いた部屋は避けましょう。
カットしたら「ワタと種」を取って冷蔵
カットしたかぼちゃは、ワタと種から傷み始めます。買ってきたらすぐにスプーンでワタと種を取り除き、切り口にラップをぴったりとかけて冷蔵庫の野菜室へ。数日から1週間ほどを目安に使い切りましょう。
使い切れないときは冷凍も
すぐに使い切れないときは、冷凍保存が便利です。ひと口大に切って生のまま冷凍するか、加熱してつぶしてから小分けにして冷凍すると、1か月ほど保存できます。つぶしたかぼちゃはポタージュやサラダ、お菓子づくりにそのまま使えて便利です。
かぼちゃの甘さを引き出す調理のコツ
選び方と保存のポイントを押さえたら、いよいよ調理です。ちょっとしたコツで、かぼちゃの甘さとおいしさはぐっと引き立ちます。

じっくり加熱して、甘みを引き出す
かぼちゃは、強火で一気に加熱するよりも、低めの温度で時間をかけて加熱すると甘く感じやすいといわれます。焼き芋と同じように、加熱の途中でも酵素がはたらき、でんぷんの一部が糖に変わるためと考えられています。オーブンでじっくり焼いたり、蒸し器でゆっくり蒸したりすると、かぼちゃ本来の甘さを楽しめます。
皮ごと使って、煮崩れを防ぐ
かぼちゃの皮の近くには、栄養が多く含まれています。煮物にするときは、皮をところどころむく程度にとどめると、煮崩れしにくく、見た目もきれいに仕上がります。皮を下にして鍋に並べ、ひたひたの煮汁で煮るのがポイントです。
油と合わせて、栄養を効率よく
β-カロテンは油に溶けやすい性質があるため、油と一緒に調理すると吸収されやすくなるとされます。天ぷらや素揚げ、バターソテー、オリーブオイルでのロースト、クリームを使ったポタージュなどは、味の面でも栄養の面でも理にかなった食べ方です。
かたいかぼちゃは電子レンジで下ごしらえ
丸ごとのかぼちゃはとてもかたく、切るのに力がいります。そんなときは、丸ごとやかたまりのまま電子レンジで数分加熱すると、包丁が入りやすくなります。加熱しすぎるとやけどの危険があるので、様子を見ながら短い時間ずつ温めましょう。
かぼちゃをおいしく食べる|煮物・ポタージュ・天ぷら・パンプキンパイ
和にも洋にもなじむのが、かぼちゃの魅力です。秋冬に楽しみたい定番の食べ方を紹介します。
かぼちゃの煮物――だしとしょうゆで素朴に
日本の家庭料理の定番といえば、かぼちゃの煮物です。だしに砂糖としょうゆ、みりんを加え、落としぶたをしてやわらかく煮ます。火を止めてそのまま冷ますと、煮汁がしみ込んで味がなじみます。甘みの強い西洋かぼちゃなら、砂糖を控えめにするとかぼちゃの風味が生きます。
いとこ煮――冬至の伝統料理
冬至に食べたいのが、かぼちゃとあずきを一緒に煮た「いとこ煮」です。かたいものから順に「追い追い(甥甥)」入れて煮ることから、この名がついたという説があります。あずきの赤い色には、古くから魔よけの意味があるとされてきました。
かぼちゃのポタージュ――なめらかな甘さ
薄切りにした玉ねぎをバターでじっくり炒め、かぼちゃとブイヨンを加えて煮てから、ミキサーでなめらかにし、牛乳や生クリームでのばします。玉ねぎの甘みとかぼちゃの甘みが重なり合い、寒い日の朝にうれしい一杯になります。
天ぷら・素揚げ――ほくほくの食感を楽しむ
薄めに切ったかぼちゃの天ぷらは、外はさくっと、中はほくほく。油で揚げることで甘みが凝縮され、β-カロテンの吸収の面でもおすすめの食べ方です。塩をひとつまみ添えると、かぼちゃの甘さがいっそう引き立ちます。
パンプキンパイ――ハロウィンのごちそう
アメリカでは、パンプキンパイは秋の収穫を祝う感謝祭やハロウィンに欠かせないデザートです。つぶしたかぼちゃに卵や砂糖、生クリーム、シナモンやナツメグなどのスパイスを加え、パイ生地に流して焼き上げます。日本のほくほくした西洋かぼちゃで作ると、濃厚で甘みの強いパイに仕上がります。
かぼちゃに合う飲み物|ほうじ茶・日本酒・ワインのペアリング
かぼちゃのやさしい甘みは、さまざまな飲み物と相性がよい食材です。
ほうじ茶・番茶
かぼちゃの煮物やいとこ煮には、香ばしいほうじ茶がよく合います。香ばしさがかぼちゃの甘みを引き立て、口の中をすっきりさせてくれます。
日本酒・ワイン
だしのきいた煮物には、ぬる燗にした純米酒など、米のうま味のある日本酒がおすすめです。ローストやポタージュなどバターやクリームを使った料理には、樽熟成のまろやかな白ワインがよく合います。スパイスをきかせたパンプキンパイには、香り高い紅茶やコーヒーもぴったりです。
【文化】「かぼちゃ」という名前と、世界のかぼちゃ
かぼちゃは、その名前にも、長い旅の記憶をとどめています。
「かぼちゃ」はカンボジアから
かぼちゃが日本に伝わったのは16世紀のことで、ポルトガル船によって豊後(現在の大分県)にもたらされたとされます。このとき、カンボジアを経由して運ばれてきたことから、「カンボジア」がなまって「かぼちゃ」と呼ばれるようになったという説が知られています。また、中国の南京を経由したと考えられたことから「南京(なんきん)」、唐(中国)から来たナスという意味で「唐茄子(とうなす)」とも呼ばれました。いま主流の西洋かぼちゃが伝わったのは、江戸時代の末期以降のことです。
世界のかぼちゃの楽しみ方
アメリカでは、秋になるとパンプキン・パッチと呼ばれるかぼちゃ畑で、家族連れが自分でかぼちゃを選んで持ち帰ります。巨大かぼちゃの重さを競うコンテストも各地で開かれ、数百キロを超えるかぼちゃが登場することもあります。イタリアにはかぼちゃを詰めたパスタやリゾット、フランスにはかぼちゃのスープやグラタンがあり、かぼちゃは世界中で秋冬の食卓を彩っています。
【哲学】待つことで、甘くなる
畑からとってきてすぐではなく、しばらく静かに置いておくことで甘くなるかぼちゃ。そのおいしさは、収穫したあとの「待つ時間」によってつくられています。
ハロウィンの夜、かぼちゃのランタンは闇を照らし、冬至の日、かぼちゃは冬を越す力を人に与えてきました。夏の太陽をたっぷりと浴びて育った実が、秋から冬へと季節が移るあいだに甘みを深め、一年でいちばん暗い日に食卓にのぼる。かぼちゃは、季節の光と影を、そのまま運んでくる野菜なのかもしれません。
急いで答えを出すのではなく、ちょうどよい時を待つこと。かぼちゃのヘタが乾いてコルクのようになるのを待つように、季節の移ろいとともに味わいが深まることを楽しむのも、ガストロノミーのひとつの楽しみといえるでしょう。
かぼちゃに関するよくある質問(FAQ)
Q. かぼちゃは収穫してすぐのほうがおいしいですか?
A. 西洋かぼちゃは、収穫直後はでんぷんが多く、甘みは控えめです。収穫後に一定期間置くことで、でんぷんが糖に変わり甘みが増す「追熟」が進みます。品種や条件によりますが、数週間から1〜2か月ほどが食べごろの目安とされます。
Q. ハロウィンのかぼちゃは食べられますか?
A. 飾り用のオレンジ色のかぼちゃは、ペポかぼちゃの仲間が多く、果肉が水っぽく甘みも少ないため、食用には向かないものが多いです。また、飾ってから時間がたったものや、くりぬいて傷んだものは食べないようにしましょう。
Q. ジャック・オー・ランタンはなぜかぼちゃなのですか?
A. もともとアイルランドなどでは、カブをくりぬいてランタンを作っていました。19世紀にアメリカへ渡った移民が、手に入りやすく加工しやすいかぼちゃを使うようになったことから、かぼちゃのランタンが定着したといわれています。
Q. 2026年の冬至はいつですか?
A. 2026年の冬至は12月22日(火)です。冬至にはかぼちゃを食べ、ゆず湯に入る風習があります。
Q. 甘いかぼちゃを見分けるには?
A. 丸ごとなら、ヘタが乾いてコルク状になり、ずっしりと重く、皮がかたいものを選びましょう。カットなら、種がふっくらと詰まり、果肉が濃いオレンジ色のものがおすすめです。
Q. かぼちゃは冷蔵庫で保存したほうがいいですか?
A. 丸ごとのかぼちゃは冷蔵庫に入れず、風通しのよい涼しい場所で保存しましょう。カットしたものは、ワタと種を取り除いてラップをかけ、冷蔵庫で保存し、数日から1週間ほどで使い切るのが目安です。
まとめ:ハロウィンから冬至まで、かぼちゃの「待つ甘さ」を味わおう
2026年のハロウィンは10月31日(土)、冬至は12月22日(火)。秋から冬にかけて、かぼちゃは二度、季節の行事の主役になります。ジャック・オー・ランタンがもともとカブだったこと、移民とともにアメリカでかぼちゃに替わったこと、そして「かぼちゃ」という名前がカンボジアに由来するといわれること。一個のかぼちゃの向こうには、海を越えた長い旅の物語があります。
そして、かぼちゃは収穫してから追熟させることで甘くなる、時間が味をつくる野菜です。ヘタが乾いてずっしりと重いものを選び、涼しい場所で保存し、じっくり加熱して甘さを引き出す。今年のハロウィンには、飾るだけでなく、ぜひかぼちゃ料理も楽しんでみてください。
GASTRONOMIXでは、これからも旬の食材を、文化・歴史・自然・科学・哲学の5つの視点から掘り下げてお届けしていきます。
※記事内の価格・産地・歴史などの情報は、農畜産業振興機構(alic)、文部科学省「日本食品標準成分表」、国立天文台の暦などで2026年10月時点に公表されている内容をもとにしています。価格や出回り時期は、天候や産地、販売店によって異なります。


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