サンマ2026はなぜ高い?歴史的不漁の理由と「秋刀魚」をおいしく味わうガストロノミー|脂の科学・選び方・塩焼きのコツ

サンマ2026はなぜ高い?歴史的不漁の理由と秋刀魚をおいしく味わうガストロノミー

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「秋の味覚」と聞いて、真っ先にサンマを思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。じゅうじゅうと脂のはぜる音、立ちのぼる香ばしい煙、大根おろしとすだちを添えた塩焼き。サンマは長いあいだ、日本の秋の食卓を象徴する魚でした。

ところが2026年の秋、そのサンマが「高級魚」になりつつあります。日本近海への来遊量は過去最低水準とされ、店頭では1匹500円前後から、大型なら700円を超える値段がつくことも。豊漁で1匹100円台が珍しくなかった前年とは、まったく違う秋になりました。

なぜ今年のサンマはこれほど獲れないのか。そして、貴重になったサンマをどうすればいちばんおいしく味わえるのか。この記事では、サンマを自然・科学・歴史・文化・哲学というGASTRONOMIXの5つの視点から読み解き、選び方や焼き方のコツ、サンマの代わりに楽しみたい秋の魚まで紹介します。

この記事でわかること

・2026年のサンマが「歴史的不漁」といわれる理由と最新の価格動向

・サンマの脂がおいしい科学的な理由と、季節による脂の変化

・おいしいサンマの選び方と、家庭でできる塩焼きのコツ

・「秋刀魚」という名前の由来や、落語・祭りに見るサンマの文化

・小ぶりなサンマの楽しみ方と、代わりに味わいたい秋の魚

2026年のサンマはなぜ高い?「歴史的不漁」の最新動向

まずは、2026年のサンマをとりまく状況を整理しておきましょう。キーワードは「過去最低水準の来遊量」「群れの到着の遅れ」「小ぶりなサイズ」の3つです。

2026年サンマの来遊量・水揚げ・価格の最新動向

来遊量は前年の約4割、過去最低水準の見通し

水産研究・教育機構が夏に公表した長期漁海況予報では、2026年に日本の沿岸近くへやってくるサンマの量は前年の約4割にとどまり、調査開始以来の最低水準を更新する見通しとされました。さらに、魚群が南下してくる時期も例年より1か月近く遅れると予測されていました。

実際、秋が深まっても水揚げは低調です。サンマの水揚げで知られる岩手県の大船渡市魚市場では、10月13日に大型船7隻が入港し、今季初めて1日の水揚げが100トンを超えました。しかし、今季の累計はこの時点で約460トン。前年の同じ日の約2,980トンと比べると、わずか15%ほどにとどまっています。

店頭価格は前年の2〜3倍に

水揚げが少なければ、当然価格は上がります。2026年は夏の初競りから高値がつき、9月以降も店頭では小ぶりなサンマが1匹400〜500円前後、脂の乗った大型のものでは1匹700円前後で並ぶ光景が報じられました。卸値が前年の3倍程度になったという報道もあります。

前年の2025年は比較的漁が好調で、1匹150〜200円前後で手に入ることも多かっただけに、その差は歴然です。「今年はまだサンマを食べていない」という人も少なくないのではないでしょうか。

不漁は食卓や地域にどう影響する?

サンマの不漁の影響は、家庭の食卓だけにとどまりません。スーパーでは特設コーナーの規模を縮小したり、冷凍サンマや輸入品を組み合わせて品ぞろえを確保したりする動きが見られます。飲食店でも、例年の「サンマ定食」を値上げしたり、提供期間を短くしたりと、対応に追われています。

また、サンマの水揚げに支えられてきた港町にとっては、漁業者だけでなく、市場や加工会社、運送業者など、地域経済全体に関わる問題です。秋の味覚の値上がりは、私たちの暮らしが海の恵みとどれほど深くつながっているかを教えてくれます。

サイズは小ぶりなものが中心

もうひとつの特徴が、サイズの小ささです。大船渡の10月13日の水揚げでも、1匹100グラム以上のものは約4割にとどまり、それより小さいものが半数を占めました。サンマの資源の中で、体が大きく脂の乗った1歳魚の割合が下がり、成長途中の0歳魚の割合が高まっていることが背景にあると考えられています。

ただし、漁業情報サービスセンターの予報では、三陸沖への魚群の来遊は10月下旬から本格化し、11月中旬にかけて低い水準ながら増えていく見込みとされています。これからの時期、少しずつ店頭に並ぶ量が増えていくことに期待したいところです。

【自然】なぜサンマは獲れなくなったのか――4つの理由

サンマの不漁は、実は2026年に突然始まったものではありません。日本のサンマの漁獲量は、かつて年間30万トン前後を記録した時期もありましたが、2010年代後半から大きく減少し、近年は不漁の年が続いています。その背景には、自然環境と人間の活動が複雑に絡み合っています。

サンマが獲れなくなった4つの理由

理由1:海水温の上昇と「暖水塊」

サンマは比較的冷たい水を好む魚です。近年、日本の近海では海水温が高い状態が続き、さらに「暖水塊」と呼ばれる温かい海水のかたまりが居座ることで、サンマの群れが沿岸に近づきにくくなっていると考えられています。群れが遠い沖合にとどまると、漁船は遠くまで出かけなければならず、燃料費もかさみます。

理由2:資源量そのものの減少と、若い魚の増加

サンマの寿命は1〜2年ほどと短く、その年の資源の状態が漁に直結します。近年は、主な漁獲対象となる1歳魚の割合が減り、まだ成長途中の0歳魚の割合が高まっていると指摘されています。小ぶりなサンマが多いのは、このためです。

理由3:公海での漁獲競争

サンマは北太平洋を広く回遊する魚で、日本の沿岸にやってくる前に公海を通ります。公海では、台湾や中国などの大型漁船もサンマを漁獲しており、日本近海に届く前に多くが獲られているとの見方もあります。

理由4:国際的な漁獲枠の削減

資源を守るため、北太平洋の漁業を管理する国際的な枠組みでは、サンマの漁獲上限を段階的に引き下げることが合意されています。持続可能な漁業のために欠かせない取り組みですが、短期的には漁獲できる量が限られることになります。

このように、サンマの不漁は「今年たまたま運が悪かった」というだけでなく、海の環境の変化と、限られた資源をどう分け合うかという、より大きな課題とつながっているのです。

【科学】サンマはなぜおいしい?脂と香りのサイエンス

サンマの魅力といえば、なんといってもあの脂の乗りと香ばしさです。サンマのおいしさを、科学の視点からひもといてみましょう。

サンマの脂の乗りと回遊、ワタと香りの科学

脂の乗りは「回遊」で変わる

サンマは夏、北の冷たい海で豊富なプランクトンを食べて栄養を蓄え、秋になると産卵のために日本の沿岸に沿って南下していきます。一般に、北の海にいる時期のサンマほど脂がよく乗っており、南下するにつれて脂が落ちていくといわれます。北海道沖で獲れる初秋のサンマが「脂が乗っている」と評価されるのはこのためです。

脂が多い時期のサンマは、身がふっくらとやわらかく、焼くと皮の下から脂がにじみ出て、ジューシーな味わいになります。一方、南下して脂が落ちたサンマは身が締まり、さっぱりとした味わいに。脂の量によって、向いている料理も変わってきます。

DHA・EPAなど、体にうれしい脂

サンマの脂には、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といった、魚に多く含まれる脂肪酸が豊富です。これらは、体内ではほとんどつくることができないため、食事からとることが大切だとされています。脂の乗ったサンマは、おいしさと栄養の両面から、秋に味わいたい食材なのです。

「ワタ」まで食べられる理由

サンマの塩焼きは、内臓(ワタ)ごと食べる人も多い魚です。サンマはほかの多くの魚と違ってはっきりとした胃を持たず、腸も短いため、食べたものが短い時間で消化・排出されるといわれています。そのため、内臓に未消化物が残りにくく、ほろ苦いワタも味わいの一部として楽しめるのです。脂の甘みとワタのほろ苦さ、そこにすだちの酸味が加わる。この味のコントラストこそが、サンマの塩焼きの醍醐味です。

焼いたときの香ばしさの正体

サンマを焼くと立ちのぼる、あの食欲をそそる香り。その一部は、皮のたんぱく質と糖が高温で反応して香ばしい香りを生む「メイラード反応」によるものです。さらに、皮の下からしみ出した脂が熱源に落ちて煙となり、その煙の香りが身にまとわりつくことで、独特の香ばしさが生まれます。昔ながらの炭火焼きのサンマが格別といわれるのは、この香りの効果も大きいのです。

大根おろしとすだちの名コンビ

サンマの塩焼きに欠かせない大根おろしとすだちにも、理にかなった役割があります。大根おろしのさっぱりとした辛みと水分は、脂の濃厚さをやわらげ、口の中をリセットしてくれます。また、すだちの爽やかな酸味と香りは、脂のくどさを抑え、味わいを引き締めてくれます。異なる味を組み合わせて全体のバランスをとるのは、まさにガストロノミーの基本といえるでしょう。

貴重なサンマだからこそ。おいしいサンマの選び方

価格が上がっている今年だからこそ、一匹一匹を慎重に選びたいもの。店頭でおいしいサンマを見分けるポイントを紹介します。

おいしいサンマの選び方4つのポイント

1. 口先が黄色いもの

新鮮で脂の乗ったサンマは、口先(くちばしの先端)がほんのり黄色くなっていることが多いといわれます。鮮度が落ちると、この色がくすんでいきます。

2. 目が澄んでいて、黒目がはっきりしているもの

魚の鮮度を見分ける基本は目です。目が澄んでいて、黒目がくっきりしているものを選びましょう。目が白く濁っていたり、くぼんでいたりするものは、鮮度が落ちているサインです。

3. 背中が盛り上がり、厚みがあるもの

頭の後ろから背中にかけて、こんもりと盛り上がり、全体に厚みのあるサンマは脂がしっかり乗っている証拠です。横から見て、体が平べったく薄いものより、ふっくらと丸みのあるものを選びましょう。

4. 体に張りとつやがあるもの

手に持ったときに体がピンとまっすぐで張りがあり、銀色の皮に青みがかったつやがあるものが新鮮です。お腹を軽く押してみて、やわらかすぎず弾力のあるものがおすすめです。うろこがはがれている部分が少ないことも、ていねいに扱われた新鮮なサンマの目安になります。

家庭でできる!サンマの塩焼きをおいしく焼く5つのコツ

せっかく選んだサンマも、焼き方ひとつで味わいは大きく変わります。家庭の魚焼きグリルやフライパンでも、少しの工夫で格段においしく仕上がります。

サンマの塩焼きをおいしく焼く5つのコツ

コツ1:塩は焼く20分ほど前に振る

サンマの両面に、少し高い位置から塩をまんべんなく振り、20分ほど置きます。塩を振ることで身の余分な水分と一緒に臭みが抜け、身が適度に締まります。表面に出てきた水分は、焼く前にキッチンペーパーでしっかりふき取りましょう。

コツ2:グリルはしっかり予熱する

魚焼きグリルは、あらかじめ数分間予熱しておくのがポイントです。網が十分に熱くなっていると、皮が網にくっつきにくく、表面が一気に焼き固まって、うまみと脂を閉じ込めることができます。網に薄く油や酢を塗っておくのも、くっつき防止に効果的です。

コツ3:「盛り付けたときに表になる面」から焼く

和食では、魚は頭を左、お腹を手前にして盛り付けるのが基本です。両面焼きでないグリルの場合は、この盛り付けたときに表になる面から先に焼くと、見た目よく仕上がります。何度もひっくり返さず、片面ずつじっくり焼くのがコツです。

コツ4:皮にこんがり焼き色がつくまで

中火でじっくりと、皮全体にこんがりとした焼き色がつくまで焼きます。皮がぷつぷつと泡立ち、脂がはぜてきたら焼き上がりが近いサインです。焼きすぎると身がパサつくので、脂がしたたり落ちる様子を見ながら火加減を調整しましょう。

コツ5:フライパンならクッキングシートを

グリルがない場合は、フライパンにクッキングシートを敷いて焼くと、皮がくっつかず、きれいに焼き上がります。ふたをして蒸し焼きにしすぎると皮がやわらかくなってしまうので、最後はふたを外して皮をパリッと仕上げるのがおすすめです。

買ったサンマをおいしく保つ、保存と下処理のコツ

サンマは鮮度が落ちやすい魚です。高価な今年のサンマを無駄にしないためにも、買ってからの扱い方を知っておきましょう。

その日のうちに食べるのが基本

サンマのおいしさをいちばん楽しめるのは、買ったその日です。すぐに食べない場合は、1匹ずつキッチンペーパーで水気をふき取ってからラップで包み、冷蔵庫のチルド室など温度の低い場所で保存します。冷蔵保存の目安は翌日まで。脂の多いサンマは、時間がたつと脂が酸化して風味が落ちやすいため、早めに調理しましょう。

冷凍するなら下処理をしてから

数日以内に食べきれない場合は、冷凍保存がおすすめです。頭と内臓を取り除き、流水で腹の中をきれいに洗ったら、しっかり水気をふき取ります。食べやすい大きさに切って1切れずつラップで包み、冷凍用の保存袋に入れて空気を抜いて冷凍すれば、2〜3週間ほどおいしさを保てます。解凍は冷蔵庫でゆっくりと。凍ったまま蒲焼きや煮物にするのも便利です。

塩焼き用は「丸ごと」のままで

塩焼きにする予定なら、内臓を取らずに丸ごとのまま保存するのがおすすめです。ワタのほろ苦さもサンマの味わいの一部だからです。ただし、時間がたつほどワタは傷みやすくなるため、丸ごとの塩焼きは買った当日か翌日までに楽しみましょう。

【歴史】「秋刀魚」の名前と、庶民の魚としての歩み

今でこそ高値が話題になるサンマですが、長い歴史のなかでは、庶民の暮らしに寄り添ってきた身近な魚でした。

サンマと日本人の歴史年表

江戸時代、サンマは庶民の魚だった

サンマが広く食べられるようになったのは江戸時代の中ごろといわれます。脂が多く、当時は上品な魚とはみなされていなかったことから、手ごろな庶民の魚として親しまれていました。安くておいしい秋の魚として、江戸の町人たちの食卓をにぎわせていたのです。

落語「目黒のさんま」が伝えるもの

サンマを語るうえで欠かせないのが、古典落語「目黒のさんま」です。鷹狩りの途中、目黒で農家が焼いていたサンマを初めて口にした殿様が、そのおいしさを忘れられなくなる。ところが、屋敷で出されたサンマは、脂を抜かれ、骨を取られ、すっかり上品に調理されていて少しもおいしくない――。「さんまは目黒に限る」という有名なオチは、素材の持ち味をそのまま生かした素朴な料理のおいしさを、ユーモアたっぷりに教えてくれます。

この落語にちなんで、東京・目黒では毎年秋に「目黒のさんま祭り」が開かれ、三陸などから届いたサンマの炭火焼きが振る舞われてきました。

「秋刀魚」という漢字の由来

「秋刀魚」という漢字は、秋においしくなり、刀のように細長く銀色に光る魚という姿をよく表しています。この表記が一般に広まったのは大正時代ごろとされ、詩人・佐藤春夫の詩「秋刀魚の歌」によって広く知られるようになったともいわれます。名前ひとつにも、季節と結びついた日本人の感性が映し出されているのです。

漁法の発展と漁獲量の変化

現在のサンマ漁の中心は、夜に強い光を当ててサンマの群れを集め、網ですくい上げる「棒受け網漁」です。光に集まるサンマの習性を利用したこの漁法の普及によって、戦後のサンマの漁獲量は大きく増えました。しかし、先に見たように近年は資源の減少と海洋環境の変化によって漁獲量が落ち込み、「庶民の魚」だったサンマは、少しずつ特別な魚へと変わりつつあります。

【文化】秋の季語、そして食卓の風景としてのサンマ

サンマは俳句の世界では秋の季語として親しまれ、多くの句に詠まれてきました。七輪で焼くサンマの煙、家族で囲む夕食の食卓。サンマは、味覚だけでなく、秋の風景や暮らしの記憶と深く結びついた魚でもあります。

落語目黒のさんまや港町などサンマをめぐる文化

三陸・北海道のサンマ文化

北海道の根室や釧路、岩手の大船渡や宮古、宮城の女川や気仙沼など、サンマの水揚げで知られる港町では、サンマは地域の暮らしと経済を支える大切な存在です。各地で開かれるサンマのお祭りは、収穫と漁の恵みに感謝し、地域の味を分かち合う場として受け継がれてきました。不漁が続くなかで、こうした港町の文化をどう守っていくかも、私たちが考えるべきテーマのひとつです。

アジアに広がるサンマの食文化

サンマを食べるのは日本だけではありません。北太平洋を回遊するサンマは、韓国や台湾、中国などでも食べられており、近年はアジア各地で需要が高まっています。韓国では塩焼きのほか、冬の寒風にさらして干した「クァメギ」と呼ばれる伝統的な干物が冬の味覚として親しまれてきました。もともとはニシンでつくられていましたが、現在はサンマでつくられるのが一般的です。台湾でも塩焼きのサンマが屋台や食堂の定番メニューとして人気です。

こうしてサンマを食べる国や地域が増えたことも、公海での漁獲競争が激しくなった背景のひとつといわれます。同じ海の恵みを分け合う国々が、どのように資源を守り、未来へ残していくのか。サンマの一皿は、国境を越えた食と環境の問題にもつながっているのです。

和食の盛り付けに込められた作法

サンマの塩焼きを盛り付けるとき、頭を左、お腹を手前にするのは、和食の基本的な作法です。右手に箸を持ったときに身をほぐしやすく、見た目にも美しいとされています。大根おろしは魚の手前右に添え、すだちは魚の手前に置くのが一般的です。こうした作法も、食を楽しむための知恵として受け継がれてきた文化なのです。

サンマと合わせたい飲み物――日本酒・ワインのペアリング

脂の乗ったサンマの塩焼きには、どんな飲み物が合うのでしょうか。料理と飲み物の組み合わせを考えるペアリングも、ガストロノミーの楽しみのひとつです。

定番はやはり日本酒です。キレのある辛口の本醸造や純米酒は、サンマの脂をすっきりと流してくれます。また、ワタのほろ苦さには、うまみのしっかりした純米酒や、少し温めたぬる燗もよく合います。秋に出回る「ひやおろし」は、夏を越して味わいがまろやかになった日本酒で、秋の味覚との相性は抜群です。

ワインなら、すだちの酸味と響き合う、爽やかな酸味の白ワインがおすすめです。日本の甲州や、ソーヴィニヨン・ブランなどの柑橘系の香りを持つ白ワインは、塩焼きの香ばしさを引き立てます。蒲焼きのように甘辛いタレを使った料理なら、渋みの穏やかな軽めの赤ワインとも好相性です。お酒が苦手な人は、香ばしいほうじ茶や、すっきりとした緑茶を合わせてみてください。脂をさっぱりと流し、サンマの香りを引き立ててくれます。

小ぶりなサンマもおいしく。今年ならではの楽しみ方

今年は小ぶりなサンマが多いのが特徴です。脂の量が控えめな小ぶりのサンマは、塩焼き以外の料理にすると、そのおいしさを存分に引き出せます。

小ぶりなサンマの楽しみ方と代わりに味わいたい秋の魚

甘辛い「蒲焼き」

開いたサンマに小麦粉をまぶしてフライパンで焼き、醤油・みりん・砂糖のタレをからめる蒲焼きは、小ぶりなサンマにぴったりの料理です。甘辛いタレが身にしっかりからみ、ごはんがすすむ味わいになります。丼にすれば、ボリュームのある一品に。

香りを楽しむ「サンマの炊き込みごはん」

軽く塩焼きにしたサンマを、しょうがと一緒に米の上にのせて炊き込む炊き込みごはんは、サンマの香ばしさとうまみがごはん全体に広がるごちそうです。炊き上がったら骨を取り除いて身をほぐし、刻んだ大葉やねぎを散らせば、香り豊かな秋の一品が完成します。今年の新米と合わせれば、秋の恵みを丸ごと味わえます。

「つみれ汁」や「缶詰」も上手に活用

すり身にしてつみれ汁にすれば、小さなサンマも無駄なくおいしく食べられます。また、サンマの蒲焼きや水煮の缶詰は、旬の時期に獲れたサンマを加工したもので、価格が比較的安定しているのも魅力です。缶詰を使ったアレンジ料理で、サンマの味を手軽に楽しむのもよいでしょう。

サンマの代わりに味わいたい、秋のおいしい魚

サンマが手に入りにくい年は、ほかの秋の魚に目を向けてみるのもおすすめです。秋は、多くの魚が脂を蓄えておいしくなる季節でもあります。

秋サバ

秋から冬にかけて脂が乗るサバは、「秋サバ」と呼ばれ、この時期に特においしくなります。塩焼きや味噌煮、しめサバなど、サンマと同じく青魚ならではの濃厚なうまみを楽しめます。

戻りガツオ

春に北上した「初ガツオ」に対して、秋に南下してくるカツオは「戻りガツオ」と呼ばれ、脂がたっぷり乗っているのが特徴です。たたきや刺身で、とろけるような脂の甘みを味わえます。

マイワシと秋鮭

近年、資源が増えているといわれるマイワシも、脂の乗った秋はおすすめの魚です。塩焼きや梅煮、フライなど、手ごろな価格で楽しめます。また、秋に産卵のため川へ戻ってくる秋鮭は、脂が控えめで身がしっかりしており、ちゃんちゃん焼きやムニエル、鍋物にぴったりです。

【哲学】「当たり前の秋」は当たり前ではない

サンマの不漁は、私たちに大切なことを問いかけています。毎年秋になれば安くておいしいサンマが食べられる――そんな「当たり前」は、海の環境と豊かな資源、そして漁に出る人々の営みによって、ようやく支えられていたものだったのです。

食べ物の価格が上がると、私たちはつい「高い」「買えない」という視点だけで物事を見てしまいがちです。けれど、その背景にある海の変化や、資源を未来に残すための国際的な取り組み、港町の人々の暮らしに思いを馳せることで、一匹のサンマの見え方は大きく変わります。貴重になった今年のサンマを口にするときは、ぜひ一口一口を大切に味わってみてください。食の背景を知り、感謝して味わうこと。それこそが、ガストロノミーが大切にしている食との向き合い方です。

そしてもうひとつ大切なのは、「選ぶ」という行為が未来の海につながっているということです。旬の時期に、必要な分だけを買い、残さずおいしく食べきる。資源が豊かな魚と、今は少なくなっている魚を知り、上手に食べ分ける。一人ひとりのそうした小さな選択の積み重ねが、サンマのある秋を次の世代へと残していく力になるのかもしれません。

サンマに関するよくある質問(FAQ)

Q. 2026年のサンマはなぜこんなに高いのですか?

A. 日本近海への来遊量が前年の約4割と過去最低水準の見通しで、水揚げが大幅に少ないためです。海水温の上昇、資源量の減少、公海での漁獲、国際的な漁獲枠の削減など、複数の要因が重なっていると考えられています。

Q. サンマはいつごろまで店頭に並びますか?

A. 例年、サンマは8月ごろから出回り始め、10月から11月にかけて三陸沖や常磐沖で漁が続きます。2026年は魚群の南下が遅れており、10月下旬から11月中旬にかけて、低い水準ながら水揚げが増えていく見込みとされています。

Q. サンマの内臓(ワタ)は食べても大丈夫ですか?

A. サンマははっきりとした胃を持たず、食べたものが短い時間で消化・排出されるため、内臓に未消化物が残りにくい魚といわれています。そのため、塩焼きではワタごと食べる人も多くいます。ほろ苦さが苦手な場合は、無理に食べる必要はありません。

Q. 脂の乗ったサンマを選ぶコツは?

A. 口先が黄色く、目が澄んでいて、頭の後ろから背中にかけてこんもりと盛り上がり、厚みのあるものを選ぶのがポイントです。体に張りとつやがあるものも新鮮さの目安になります。

Q. サンマが高いときにおすすめの代わりの魚は?

A. 秋サバ、戻りガツオ、マイワシ、秋鮭など、秋においしくなる魚がおすすめです。特にマイワシは近年資源が増えているといわれ、手ごろな価格で脂の乗った味わいを楽しめます。

まとめ:貴重になったサンマを、知って味わう秋に

2026年のサンマは、来遊量が過去最低水準の見通しとなり、店頭価格は前年の2〜3倍に。背景には、海水温の上昇や資源量の減少、公海での漁獲、国際的な漁獲枠の削減といった、海と人間をめぐる大きな変化があります。

だからこそ、今年のサンマは一匹一匹が特別です。口先が黄色く背中の盛り上がったものを選び、塩を振って20分置き、よく予熱したグリルでこんがりと焼く。大根おろしとすだちを添えれば、脂の甘みとワタのほろ苦さ、香ばしい香りが織りなす秋の味わいが楽しめます。小ぶりなサンマは蒲焼きや炊き込みごはんで、手に入りにくいときは秋サバや戻りガツオで。サンマを通して海と食のつながりを知ることで、この秋の食卓は、きっといつもより豊かなものになるはずです。

GASTRONOMIXでは、これからも旬の食材を、文化・歴史・自然・科学・哲学の5つの視点から掘り下げてお届けしていきます。

※記事内の水揚げ量や価格などの情報は、2026年10月中旬時点で公表・報道されている内容をもとにしています。最新の情報は各漁業関係機関の発表をご確認ください。

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